この芝居はラストが観客へ向けて強烈なアジを投げかけて終わる。
その時の生原稿である。
5 昭和精吾「さあ、フルーツガム・カンパニーは見たかい?」から始まってゆくが、5で5人目にアジったのか、あの時5人しかアジらなかったのか今は思い出せない。
5と書かれているが最初の切り込み隊長をやったような感じがする。記録がある「邪宗門」も確かにそうであった。


寺山さんは本番中であっても平気で順番や出入りを変えたりする人であったし初日前でも、自分の意図しない演技を出すと、すぐに役を変えたりもする人であった。
良い意味の芸術至上主義者、自分から見て悪く言って、あまりにも「身勝手主義者」であった。
「昭和!いい加減にせい!」
何度言われた事か。当時、一緒に寺山さんと演劇活動をしていた劇団員の誰に聞いてもいい、一番怒られたのが何を隠そう、この俺であった。これだけは今でも間違いなく自慢できる。全く出来の悪い役者だったんだと感心している。


部屋に2枚の寺山さんの写真が飾ってある。
一枚は告別式で飾られた写真。そしてもう一枚は、ある新聞で「故郷論」を語った時のお互いが少し照れ笑いしている写真である。一番好きな写真である。
「寺山さん、俺には良く怒ったけど本当は俺の為だったんだよね」この年になり酔い始めると、ふと二枚の写真に向かってつぶやく昨今。春遠からじの日である。


だが、今日は寒い。それにしてもFBIは凄い。今は「時事通信社」のビルになっているが女房と、前は「銀座東急ホテル」だったか「東急銀座ホテル」だったか名称に正確さを欠くが、一階で食事していた時だったと思うが、偶然、連行されるのを見たような気もするし、逮捕が深夜だったら完璧な勘違いである。日本で無罪、そして20数年たって再逮捕。心中いかに、静かに見ていよう。寒かろうに早く親子さん見つかりますよう祈りつつ。